東京高等裁判所 昭和59年(く)224号 決定 1984年9月07日
被告人 永井啓之
主文
各原決定を取消す。
被告人に対する本件各勾留の執行を昭和五九年九月七日午前九時から同日午後六時まで停止する。
勾留執行停止中は別紙指定の条件を忠実に守らなければならない。
理由
<中略>そこで検討すると、原決定が被告人の母親が危篤であることを理由として勾留の執行を停止したこと自体は必ずしも著しく不当な措置であったと断ずることはできないが、本件被告事件の罪質(編注・兇器準備集合、傷害致死等)、態様、背景、被告人の役割、捜査段階からの事件の経過等からうかがわれる逃亡及び罪証隠滅の虞れの程度を考慮するときは、昭和五九年九月七日午前九時から翌八日午後四時までの二日にわたり執行を停止したことは、必要性、相当性に乏しく、不当と認めざるを得ず、原決定がその条件として執行停止中検察官が被告人に介護者を付すことができる等の条件を付していることをもってしても、その不当性を否定し去ることはできない。したがって、その限度で論旨は理由があるので、刑訴法四二六条二項により各原決定を取消し、同項に基づき更に主文二項及び三項のとおり決定することとする。
(小野 香城 安藤)
(別紙)
指定条件
一、逃亡し若しくは罪証を隠滅すると疑われるような行動は避けなければならない。
二、召喚を受けたとき正当な理由がなく出頭しないようなことがあってはならない。
三、被告人の住居を東京都大田区池上二ノ七ノ一〇医療法人松井病院五〇二号室と制限する。
四、被告人を弁護人戸谷豊、同大室俊三、同辻恵、同尾嵜裕に委託する。
五、右一項の規定する行為を防止するため検察官は介護者を付することができる。